B2 / RESOURCE

なぜパートナーは突然
売らなくなるのか

「突然」ではありません。シグナルは前から出ていました。
観測の解像度が低かっただけ ── これが、ほぼすべての離反の正体です。

順調に動いていたパートナーが、ある日を境に動かなくなる ── パートナーセールスを担当していれば、誰もが一度は経験する現象です。多くの場合、現場の口からは「急に動かなくなった」「理由がわからない」という言葉が出ます。

しかし、業界の登壇者たちが語る現実は違います。「突然」は実在しない、観測できなかっただけ ── これがこの章の出発点です。

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「突然売らなくなる」現象の正体

スマートドライブで Tier階層・重要度ランク 戦略を率いる高田氏は、これを率直に語っています。

(営業プロセスに)則ってだけ進めると『あれ? パートナー企業の営業の方が急に動いてくれなくなったな』みたいなことが起きます。正直、我々もめちゃくちゃ経験しています。
— 高田亮介 氏(株式会社スマートドライブ パートナーグループ統括部長) 出典:パートナービジネスのTier戦略と組織攻略のリアル ― スマートドライブ×SmartHR(partnersales.biz セミナーレポート)

重要なのは、その後に続く解像度の上げ方です。

同じ企業の別の方によく聞いてみたら、いつも一緒にやっていた支店の支店長が『今は本業のこの数字をとにかく上げろ』と支店内で言っていて、それによって営業の方と一緒にやっていた商材を顧客に持って行きにくくなった。
— 高田亮介 氏(株式会社スマートドライブ) 出典:パートナービジネスのTier戦略と組織攻略のリアル ― スマートドライブ×SmartHR(partnersales.biz セミナーレポート)

「突然」と感じた現象の正体は、パートナー社内の 支店長の方針転換 という具体的なイベントでした。観測できていなかっただけで、原因は明確に存在していたわけです。問題はベンダー側のセンサーにあって、パートナー側にはありません。

02

離反の前に出ている4つのシグナル

非アクティブ化は、ある日突然訪れるものではなく、いくつかのシグナルが前段階で必ず観測されています。

離反前に出るシグナル
  1. 接触頻度の低下 定例の頻度が落ちる、チャットの返信が遅くなる、雑談量が減る
  2. 提案数・質問数の減少 これまで来ていた仕様の問い合わせや見積依頼が止まる
  3. パートナー社内の方針転換 本業へのリソース集中、人事異動、評価制度変更など
  4. 担当営業の交代・他社接触 キーマンが配置換え、競合の名前が会話に登場し始める

これら4つのシグナルは、いずれも商談データには現れません。商談ステータスを見ても気付けない、活動ログにも残らない領域に存在しています。だからこそ「突然」と見えてしまうのです。

03

非アクティブ化は「接触頻度の低下」から始まる

コロナ禍は、接触頻度低下と非アクティブ化の関係を、業界全体に強制的に証明することになりました。

コロナをきっかけに非アクティブのゴーストパートナーになる確率ってのが少し増えたという事実がありました。なぜかというと、私たちってパートナーさんに同行して、密着型の関係性を築いていくようなやり方でこれまで対応していたことから、実体験として現地に行けなくなってしまったっていうところが1番多い要因としてありました。
— 樫山知拓 氏(株式会社インフォマート パートナー事業部 副部長) 出典:パートナー契約後、最初に実施すべきアクション(partnersales.biz セミナーレポート)
パートナーさんからすると、今まで来ていたうちの社員が来なくなったんで、『●●さんのためだから頑張ってた』というようなものがなくなってしまったので、それが要因で当社は非アクティブになったパートナーさんが一定数いらっしゃっいましたね。
— 樫山知拓 氏(株式会社インフォマート) 出典:パートナー契約後、最初に実施すべきアクション(partnersales.biz セミナーレポート)

パートナーが動く動機は、商品スペックや手数料率だけではありません。「●●さんのために頑張る」という、関係性への動機が大きく効いています。だから接触頻度が落ちると、関係性が薄れ、結果として活動が止まる ── これは個別の事故ではなく、構造的なメカニズムです。

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観測対象は「会社」ではなく「個人」

ここで重要なのは、シグナルを取る単位です。「A社が動いていない」では粒度が粗すぎる。実際の運用は、もっと細かい解像度で行われています。

『個人単位』でカウントし、KPI業績を測る主要指標をモニタリング。人対人なんですね。結構KPIを設定する際に、例えばA社さんに何回訪問したとか、週に何回電話したか。
— 冨樫嘉一 氏(株式会社ラクス) 出典:パートナー様からの商談数(紹介数)を伸ばすためにやるべきこと(partnersales.biz セミナーレポート)

パートナー会社単位ではなく、パートナー社員「個人」単位 で訪問・電話の頻度を観測する。これが業界の最前線の運用です。なぜなら離反のシグナルが現れるのは個人レベルだから。「あの人が異動した」「あの人の方針が変わった」という個別事象が、結果として会社の数字を動かすからです。

ところが、ほとんどの汎用 CRM顧客管理システムPRMパートナー関係管理 は、こうした「個人単位の接触頻度」を構造的に持ちません。だから観測が荒くなり、「突然」が量産されてしまうのです。

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再活性のタイミングは外部イベントで来る

では、いったん非アクティブ化したパートナーは、もう戻らないのか。マネーフォワードの青山氏の運用論は、ここに別の視点を与えてくれます。

1メーカーが『いやークラウドERP経営資源の統合管理ツール売ってください』と言ってもあまりアクティブになるイメージがないので、コロナのような市場環境が大きく変わるタイミングとか、法改正とか、顧客の意識が変わってくるまでは辛抱強く待つっていうのも1つの選択肢なのかなって思います。
— 青山徹 氏(株式会社マネーフォワード Business Company パートナービジネス本部 副本部長) 出典:パートナー契約後、最初に実施すべきアクション(partnersales.biz セミナーレポート)

無理に動かそうとせず、市場イベントで自然に再活性するタイミングを待つ。ただし、その瞬間に第一想起されているかどうかが勝負です。そのために何が必要かというと ──

この待つっていう時に必要なのが、今までの関係性は良いには越したことはないんですけど、関係性は普通であったとしても、何かあった時にすぐに連絡が取れる状態を常に保っておくというのが重要であるかと思います。常に連絡が取れる状態を保ちつつ、コミュニケーションを負荷なく取ることができる仕組み・オペレーションだけ持っておくっていうのが必要なのかなと思ってます。
— 青山徹 氏(株式会社マネーフォワード) 出典:パートナー契約後、最初に実施すべきアクション(partnersales.biz セミナーレポート)

キーワードは「負荷なくコミュニケーションを取れる仕組み」です。すべてのパートナーに対して密着型の関係を維持するのは現実的ではない。けれど、いざというときに想起される最小限の接点 ── 軽量な観測と接触の仕組み ── は、戦略的に持っておく必要があります。

この章の含意
パートナーは 突然 売らなくなるのではありません。シグナルは前から出ています。問題はベンダー側のセンサーが粗いこと。個人単位の接触頻度パートナー社内の方針変化関係性の希薄化 ── これらは、商談データには絶対に現れない情報です。

そして、これらを取りに行く道具として、汎用 CRM は構造的に向いていません。次章では、その理由を データモデルの観点 から掘り下げます。
語句
PRMピー・アール・エム
Partner Relationship Management。パートナー企業との関係管理を支援するシステム領域。従来は商談管理に偏り、関係性の管理が手薄だった。
CRMシー・アール・エム
Customer Relationship Management。顧客との関係を一元管理するシステム。Salesforce や HubSpot が代表。コンタクト・案件・商談を扱うが、パートナー構造は持たない。
KPIケー・ピー・アイ
Key Performance Indicator。組織や事業の業績を測る主要な指標。
ERPイー・アール・ピー
Enterprise Resource Planning。企業の経営資源(人・物・金)を統合的に管理するシステム。SAP・Oracle 等。
Tierティア
パートナーを重要度別に分類する区分(Tier 1 / 2 / 3 など)。重点パートナー設計の基本概念。
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CRM はコンタクトを管理するもの。パートナーセールスの構造は持っていない
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